口述対策② 論文発表直後の出来事

今回は物語形式で昨年の口述を振り返っていこうと思います。

生の体験から口述対策・試験をシミュレーションしてもらえればと思います。

受験生の方は忙しいと思うので、大事な所は赤字にしてます。そこだけ読むのもいいかもです。

また、既に受け終わった人も、「こんなことあったなあ」という思いで懐かしみながら読むと面白いかもです。

(注)

【】内が基本的に今の筆者の視点

それ以外は当時の筆者の心境

 

 

2021/10/6

時刻は16時、そう令和3年度の予備試験論文発表がされる瞬間だ。

その瞬間何をしていたかというと、ローの会社法の授業を受けていた。

授業は15時~16時30分。正直言って授業開始からもう既にそわそわしていた。時計の針が進むにつれ心拍数が上がっていく。おそらく今年の受験生の多くもそんな気持ちになたのではないだろうか。

そして16時30分、授業が終わった。すぐにでも結果を確認したかったが、反面結果を知ってしまうことが怖かった。論文の結果に自信があったわけでもなく、正直6割ぐらいの確率で落ちてるだろうなとも思っていたからである。

そこでひとまず図書館へ向かう。

昂る気持ちを抑えながら、司法試験委員会のホームページへ。まずは論文の総合結果から見ることにする。

合格点は…240点。昨年よりも10点も高いじゃないか。

この瞬間不合格が頭によぎる。なぜなら去年は合格点230点で落ちている。今年の出来は昨年よりも良いとは思わなかったのだ。

【しかし、これは自身の能力がアップし、ある意味目が肥えてしまっていて、厳しめの自己評価をしていたからなのだが、そんなこと当時は知る由もない。

手応えが悪くてもそれは昨年よりも自分の目が肥えてしまっているだけのこともあるから、受験生はあまり自身の分析を絶対視しない方が良い。】

 

それはさておき、話を進める。

その後どうしたかというと、私は唐突に近くのカラオケ店に向かう。結果はどうあれ、叫んでしまいそうだったからだ。

そしてカラオケ店に向かう。時間にして17時を過ぎていた。

手続を済ませて自身の部屋に入る。ここは防音で、基本的に誰かに見られるということもない。深呼吸し、ついに合格者の受験番号一覧を見る。

私の受験番号は大阪市〇△◇、そして探していくと…〇△◇。

そう、受験番号があったのだ。

その瞬間のことは今でも覚えている。両手を思いっきり拳に突き上げ、声の限り叫んだ。全身の血がたぎってくるのがわかる。高い高い壁をついに超えた。その興奮は筆舌に尽くしがたい。

その勢いで私は歌った。選んだ曲は「民法709条」、法学徒御用達の曲である。

カラオケ店を出たのは18時過ぎ。そのまま電車で帰ることにした。この辺りから興奮も冷め頭に不安がよぎり始める。

「自分は口述の対策を何もしていない。落ちるのではないか。」

そうなるのも仕方ない。なぜならば折角口述対策をしても、落ちたときにショックが倍になる。そんな現実から目を背けてしまったのだ。

【しかし、こう思うことは何もおかしなことではない。多くの受験生もそう思っている。

自分だけではない。むしろ、ここでお尻に火が付いた方が本気で勉強できる。そうポジティブに捉えるようにするべきだし、その事実自体何も間違っていない。】

 

さて、自室に戻ってこれからの対策を思案する。

何をすべきかを整理した結果、①過去問対策、②模試の予約、③ホテルの予約の3つに着手した。

【このうち②と③はそれほど急ぐ必要はない。

②に関しては、前記事で書いた通り、伊藤塾の模試で足りるからである。

③に関しては、急ぎたかった急げばよいが、会場の周りには大きなホテルが多くある。あれが全て埋まるとは考えられない。ちなみに、約した部屋は2泊3日で14000円。一番会場から近いホテルであった。】

 

過去問を見て焦る。まず、最初の訴訟物すらパッとは出ない。進むにつれ解答が浮かばない難問が出る。59点や60点の再現ですら完成度が高い。

このような状況のなか、軽くパニックになり、不安は一層強まる。

 

【これまた当然、こんな受験生は今年もいると思う。

ここで私が抱いた不安に関して、1つずつ解消しておこう。

訴訟物がパッと出ないのは、勉強不足でも知識不足でもない。今までは紙に書いての試験だったからというだけのことである。この場合ある程度ゆっくり思い出しても差し支えない。しかし、口述は違う。沈黙があってはまずい試験だ。そのために、これからの2週間を使うのだ。とにかく、脳で瞬間再生できるまでに覚えきる。

次に、難問に関してだが、これまで解こうとするとドツボにはまる。普通の受験生が使う教科書に書いていない事項はできなくても仕方ない。

62点以上の高得点を目指すなら話は別だろうが、そうでなければ過度に心配する必要はない。そういう問題が出たときは何か喋る。間違えても良い。最悪オウム返しでも良い。

難問が原因で落ちるとしたら、沈黙ぐらいだろう。

最後に再現答案について。これは実際に自分が書いた側の立場になればわかる。

実際の本番では、61点以下ぐらいなら確実にどこかで詰まっている。59点がつく場合なら、相当詰まっているだろう。しかし、多くの場合再現答案では反映されていない。そう、まるでスムーズにいったかのように…。

予備校(主にI塾)に提出されている再現答案は、半ば強制的に提出されている。そのため、わざわざそんな複雑な所まで書こうという人は少ない。また、詰まったという嫌な思い出は記憶から消されがちである。

ここまで読むと、以上の不安も和らぐのではないだろうか。】

 

過去問を一通り見たうえで、必要な教科書を洗い出す作業をした。

まず民事、どうみても大島本。ただし基礎編だけでは足りないだろうと思った。発展編も読もうと思い、大学図書館に予約をした。

大島本は執行保全は弱いが、当該分野では過去問を見るとそこまで突っ込んだ質問は来ていない。予備論文の過去問をもう1度見ればよいだろうと思った。その教材としては伊藤塾の予備試験対策用の赤本。なんとこれには巻末で執行保全についての記載もあり、オトクだ。

次に刑事、まずは事前評判もよかった基本刑法各論をピックアップ。口述のネタ本にもなっており、必須だ。ただし、わざわざ買うのもどうかと思い、これまた図書館で予約。同書は人気で、第1版しか借りられなかったが、特に問題はないだろうと思ったし、【それで正しかった。】

手続法はどうしようと思ったが、ここは予備校本を頼ることにする。過去問を見るにここは難問も多く、本格的な教材が必要かとも思った。しかし、やはり基本で差をつけられないことを意識し、伊藤塾山本講師の定石本に決めた。当然大学の図書館にはあるわけがないので、この本だけ購入に至る。

 

このような計画を立てたところで、初日は寝ることにした。

この日、プロ野球ではDeNAがソト選手が逆転ホームランを打ち、逆転勝利。そのホームランは自分の論文合格を祝う花火のように思えた。

そんな心地よさで少し不安も薄れ、精神的には良いコンディションを保つことができた。

                                   (続く)